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これは済州道の民間で、巫堂たちが主導し村落をまわりながら、儺礼を挙行したことを伝えている。

●儺礼に関した民間のあそび●

?地神踏み(理鬼)………中国と韓国では、儺礼はいずれも時代の変遷とともに民俗的信仰が結びつき、地方色まで加味され変貌した。その中で注目されるのは韓国では正月初めに農楽隊が家々を訪問し地神を踏む民俗がよくみられるが、これも儺礼から由来したという事実である。
地神踏みは京畿道・忠清道・慶尚道・全羅道などいくつかの地域で現在もなお正月初めに行われる民俗戯である。だいたい正月三日から十四日のあいだに農楽隊が家々を訪問し難鬼を追い払い祝願する。これを地神踏みというのだが、板の間(成造神)・おくのま(祖上神)・台所(篭王神)・庭・便所(厠神)・大門(門神)・井戸(井神)などの順序で祝願する。土地神・竈王神・業神(儺礼では増福神)門神・厠間神・井戸の神(井神)などはすでに中国の儺礼に登場していた神だ。中国と韓国の宮中・官衛・民間の儺礼では農楽隊の地神踏みと類似した姿が見られるのだが、これを埋鬼とよんだ。農楽隊が楽器を演奏するのはメグ・メグチギというのだが、これは「埋鬼」から由来した言葉だ。
現在、韓国でもっとも有名な地神踏みの中のひとつに釜山の東來地神踏みがある。農楽ソ隍ンナム隊はまず部落の主山に行き城陰神木がある城隍堂の前でお酒とつまみを用意し、焚香再拝した後で“主山地神解き(よごと)”をした後、部落にもどり各家庭を訪問する。長楽隊を先頭に士大夫・八大夫・砲手などの仮装行列がその後を追う。一行がおとずれた家の大門の前で“御主人、御主人、門を開けなさい”というと、主人が大門を開けて迎える。農楽隊はその家の庭でマダンノリをした後、いたの素大庁の前で“大庁地神解き(よごと)”をし、つづいて大部屋の前で“大部屋成造解き(よごと)”、各部屋の前で“各部屋治将解き(よごと)”、台所の前で“竈上地神解き”、井戸の前で“井戸地神解き”、(醤油やみそを貯蔵する)かめ置きの前で“かめ地神解き”、納屋の前で“倉地神解き”、厠間の前で“厠間地神解き”、大門の中では“大門地神解き”、最後に“酒神解き”をすると主人が酒案床を出してくれる。

 

成造地神厄払い

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床地神厄払い

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